タイミング法は、排卵日をできるだけ正確に予測し、妊娠しやすい時期に夫婦生活を持つことで自然妊娠を目指す治療法です。不妊治療の中では医療の介入度が低く、身体面や費用面での負担が軽い方法です。
超音波検査で卵胞の大きさを測り、排卵の時期を正確に予測し、医師が適切なタイミングを指導します。必要に応じて排卵誘発剤などを使用することもあります。
また、単に排卵日を予測して妊娠を後押しするだけでなく、卵胞の発育具合や実際に排卵したか、精子が子宮内へ進入できたか、排卵後の子宮内膜や黄体機能なども確認しながら、妊娠を妨げる原因がないかも調べていきます。
~タイミング法 INDEX~
タイミング法とは?
体・心・費用、あらゆる面でもっとも負担の少ない治療法
不妊治療の方法には、大きくわけて3つのステップがあります。妊娠に至るプロセスへの医療の介入度が最も低いファーストステップが、このタイミング法(タイミング指導)です。病院で正確に予測された排卵のタイミングにあわせて、ご主人との夫婦生活(セックスの機会)を持ち、自然妊娠を期待するという方法です。不妊原因となる明らかな症状がある場合には、問題点を補ったり、取り除いたりするための投薬治療などもあわせて行うことになります。
不妊治療と聞けば、体外受精などの高度治療がクローズアップされがちですが、ご夫婦の負担を考えれば、タイミング法は重要な治療法です。心にも体にも負担が小さいだけでなく、ほとんどに健康保険が適用されますので、金銭的にも最も負担が軽くなります。
この治療法は、単に夫婦生活のタイミングだけを指導するというものではありません。医師は、一連の経過の中で、卵胞はきちんと発育していて、本当に排卵しているのか、排卵時に十分な頸管粘液が分泌されていて、その中に精子が侵入できているのか、また排卵後の子宮内膜は十分に厚くなっているかといったことを、毎周期しっかり確認します。不妊原因になるようなトラブルが発生していないか、常に目を光らせていることが重要で、それではじめて本来の効果が得られます。
自然妊娠の確率を上げる
精度の高いタイミング法で、自然妊娠の確率を最大に!
夫婦生活による妊娠の可能性を最大にしたければ、肝心なのが夫婦生活のタイミングです。単に排卵日前後にチャンスを持てばいいのではありません。卵子の寿命をごぞんじですか? 排卵後半日から、せいぜい一日のみ。一方、精子は女性の体内であれば、数日は生きています。つまり、先に精子を卵管の先端に送り込み、卵子が排卵されてくるのを待たせておくのが得策なのです。
このタイミングは、基礎体温を測っているだけでは見極められません。卵巣内の卵胞の直径を超音波検査で計測し、正確に排卵日を予測し、夫婦生活のベストなタイミングを医師が指導するのが、いわゆるタイミング法です。
タイミング法の流れ
はじめの一歩は、医療の手を借りて、排卵日を正確に予測してもらい、夫婦生活のタイミングをしっかりあわせることから

- おおよその排卵予測
過去の基礎体温表から、おおまかに排卵が起こりそうな日を予測します。 - 卵胞サイズをもとに予測日を修正します
排卵誘発剤を使わない自然周期の場合は、 卵胞の直径が20ミリくらいになったところで排卵することが多いのです。 そこで、排卵予測日の3日程度前を目安に病院へ行き、超音波検査で卵胞のサイズを測り、それをもとに予測を微調整します。
※保険診療では、薬剤を用いない自然周期にタイミング法を行う場合の超音波検査は1回のみ、排卵誘発剤を用いた周期の場合は3回まで認められています。 - 排卵3日前に先遣隊を送り込みます
検査の結果、やはり3日後あたりに排卵が起こりそうだということになれば、その日に一度夫婦生活を持っておきます。万が一予測日がずれた場合にそなえて、条件がよければ女性の体内で数日間は生きている精子のほうを先に送り込み、卵管でスタンバイさせておこうという作戦です。 - ドクターが指定した日に夫婦生活を持ちます
できるだけ排卵直前になるように、ドクターが妊娠しやすい夫婦生活のタイミングを指定します。 - 排卵促進剤(hCG製剤)の注射で排卵を後押し(※排卵誘発剤を用いた周期)
排卵誘発剤を用いている周期には、夫婦生活を持つ日の前日に排卵促進剤(hCG製剤)の注射を投与します。 - 黄体機能を調べます(※排卵誘発剤を用いた周期)
さらに1週間後の高温期中期(着床時期)に、着床や妊娠維持に重要な役割を果たす黄体ホルモンの分泌量を血液検査で調べます。同時に、超音波検査で子宮内膜の厚さが十分かどうかもチェックします。
投薬治療との併用
不妊検査で、排卵障害など薬剤で解決できる問題が見つかった場合には、投薬治療を併用しつつ、不妊治療のステップを上がっていきます
排卵誘発剤

自然には排卵が起こりにくい、もしくは起こらない場合、または黄体の働きが悪い場合などに使います。
飲み薬/シクロフェニル製剤
もっとも軽い排卵誘発剤です。クロミフェン製剤にくらべれば、排卵誘発効果はそれほど強くありませんが、目立った副作用もありません。
飲み薬/クロミフェン製剤
軽い視床下部性の排卵障害や多嚢胞性卵巣(PCO)などに有効な脳のエストロゲン受容体に働きかけるタイプの排卵誘発剤です。従来より、広く使われてきました。ただし副作用として、頸管粘液が少なくなる、子宮内膜が厚くなりにくい、またまれに眼がかすむなどの症状がみられることがあります。
飲み薬/レトロゾール製剤
軽い視床下部性の排卵障害や多嚢胞性卵巣(PCO)などに有効なエストロゲンを作るアロマターゼという酵素を阻害するタイプの排卵誘発剤です。副作用は多くはありませんが、疲れやめまい、まれに眠気があらわれることがあります。
注射/hMG(FSH)+hCG療法
クロミフェン製剤やレトロゾール製剤で効果がなければ、注射タイプの排卵誘発剤(hMG製剤)と排卵促進剤(hCG製剤)を併用することがあります。
ED治療薬
飲み薬/シルデナフィル製剤
ED(勃起不全)によりタイミングがうまく取れない場合には、バイアグラ(シルデナフィル製剤)のようなED薬の効果が期待できます。
不妊治療にED薬を使用する場合は、保険適用(ジェネリックを除く)となります。
血管を拡張し血流を良くする作用がありますので副作用として、頭痛やほてりなどがみられることがあります。
なお、ED薬には性欲を高める効果はありません。
そのほか一般不妊治療で使われる薬
hCG製剤
hCGは、胎児の絨毛(やがて胎盤になる組織)から分泌されるホルモンで、卵胞の最終成熟と卵子の排出(排卵)を促す黄体化ホルモン(LH)に分子構造が似ていることから、排卵促進剤として用いられます。
カベルゴリン製剤
乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)の値が高いときには、排卵障害や着床障害を起こす可能性があるので薬で抑制します。
甲状腺ホルモン剤
甲状腺機能低下症の場合も、過多月経、無排卵、流産、高プロラクチン血症などの原因になるとされています。甲状腺ホルモンを補う必要がありますが、投薬量のコントロールが難しいため、専門医との協力のもとで行なっています。
漢方薬
体質、症状にあった漢方薬を処方します。体調を整え、妊娠の可能性を高めるためには有効です。
よくある質問
- どんな人が対象ですか?
- 以下の条件が確認されているご夫婦が対象です。
- 少なくとも片側の卵管は通っている
- 排卵がある
- 女性の年齢に余裕がある
- 精液中に動きに問題のない、十分な数の精子がいる
- 不妊期間が長くない
- 保険適用になりますか?費用はどのくらいかかりますか?
- 保険治療が適用されます。女性の年齢制限、タイミング法を受ける回数制限などもありません。
薬剤をほとんど使わない自然周期のタイミング法であれば、3割負担の方で1周期あたり3,000~6,000円程度になるケースが多いでしょう。 - 何回通院する必要がありますか?
- 1周期あたり、排卵期前後を中心に2、3日程度とお考えください。
排卵誘発剤、排卵促進剤などの薬剤で後押ししないと自力での排卵が起こりにくい方は、多少、通院回数が増える場合があります。 - 男女そろって来院する必要はありますか?
- 保険診療でタイミング法を受けるための治療計画書の作成には、男性の受診、サインが必要ですが、いざ治療が開始されてからは男性の通院は必要ありません。
- 事前にどんな検査をしますか?
- タイミング法と不妊検査は併行して行われる場合が多いです。
を確認し、排卵期に向けて卵胞の成長を超音波検査で通院のたびに確認。
月経周期に合わせた各種ホルモン検査なども行っていきます。 - 排卵日はどうやって予測するのでしょうか?
- 月経10~12日目頃に経腟超音波検査で卵胞のサイズを測り排卵日を予測します。薬剤を使わない自然周期の場合は、 卵胞の直径が20ミリくらいになったところで排卵することが多いとされています。
また、排卵時期をより正確に判断するため、LH・E2・プロゲステロンなどのホルモンの血液検査を併用することもできます。
※保険診療では、薬剤を用いない自然周期にタイミング法を行う場合の超音波検査は1回のみ、排卵誘発剤を用いた周期の場合は3回まで認められています。 - タイミング法の妊娠率は、どの程度なのでしょうか?
- 体外受精などと違って全国的な統計データなどは集計されていませんが、日本産婦人科医会は、原因不明不妊症におけるタイミング法の1周期あたりの妊娠率は約5%と説明しています。
- 何回試してダメだったら次のステップに進むべき?
- 日本産婦人科医会は、タイミング法にチャレンジして妊娠した原因不明不妊カップルの累積妊娠率は6ヵ月で50%(2組中1組)、24ヵ月続ければ60%までは多少伸びますが、そこで頭打ちになるとしています。
女性の年齢や不妊期間、ほかに妊娠を妨げる原因があるかも考慮しながら、ご相談していきましょう。
【監修者】
ENA山下ウィメンズクリニック
院長 江夏 徳寿











